フリーランス新法を解説
フリーランス新法が成立しました(施行日未定)
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)が、2023年4月に国会で可決成立しました。施行日は未定ですが、2024年(今年)の秋頃までには施行される見込みです。
この法律では、フリーランスを「業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの」と定義し、フリーランスに業務委託する事業者を発注事業者と呼んでいます。
フリーランスという働き方
2020年に内閣官房が実施した調査では、462万人がフリーランスとして働いていると試算されており、業種もデータ入力、デザイン制作、カメラマン、ウェブサイトの作成・管理、インストラクター、営業、運輸、建設・現場作業など、多種多様です。
今後、働き方が多様化する中で、フリーランスとして働く人はさらに増えていくと思われます。
その一方で、フリーランスとして働く人達の中には、実際には企業に雇用されているのと同視できるような働き方をしているにも関わらず労働法の保護を受けられなかったり、取引の相手方との関係性によって不利な契約を余儀なくされたりする人がいるという問題があります。そこで、取引の適正化と働く人の保護のために作られたのがこの法律です。
■フリーランスに業務委託する際の注意点
フリーランス新法で、どのようなことが定められたのでしょうか。
フリーランスに業務委託する際、発注事業者には、次のことが義務づけられます。なお、「継続的業務委託」の範囲など、細かい点については、これから施行日までの間に定められ公表される予定です。
- 書面等により取引条件を明示すること
- 発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内の報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払うこと
- 継続的業務委託をした場合に、フリーランスに責任がないにもかかわらず、「発注した物品等を受け取らない」「発注時に決めた報酬額を後で減額する」「発注した物品等を受け取った後に返品する」などの禁止行為をしてはならないこと
- 広告等にフリーランスの募集に関する情報を掲載する際に、虚偽の表示や誤解を与える表示をせず正確かつ最新の内容を保つこと
- 継続的業務委託をした場合に、育児介護等と業務の両立に対して必要な配慮をすること
- ハラスメント対策に係る体制を整備すること
- 継続的業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、原則として30日前までに予告すること
■まとめ
フリーランス新法は、下請法(下請代金支払遅延等防止法)とよく似ており、そこから保護の対象をさらに拡大させたものともいえます。フリーランスとして働く事業者と取引をされる場合は、不当な契約内容とならないよう注意し、トラブルを避けるために契約内容を常に明確にすることを意識しましょう。「まあ、わかるやろう」「普通はこうするから書かなくてもいいやろう」は禁物です。
著者
メイプル法律事務所
小野 順子
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