『求人募集・採用について 第3部』 (全3部)

『求人募集・採用について 第3部』 (全3部)

選考時に気を付けたいこととすぐに退職されてしまわないために
5.採用選考

 会社の方針として選考上の優先順位は決めておきます。
能力の高い方 なのか 長く勤めてくれそうな方 なのか。このあたりからは採用成功を目指すだけでなくその後に離職につながらないように対応していきます。

1) 履歴書や職務経歴書での書類選考

選考で○×を付けられるほど応募者が集まることはなかなかありません,それでもこの方は「×」と感じたら人手不足でも採用してはいけません。自社で教育訓練できる応募者の範囲はつねに考えておきます。

・経験やスキル 特に前職があればどんな技能どの程度の技量か自己申告でよいから聞いておきます。実際に業務に就いてからのその従業員の作業能力と申告した技能の差について会社で評価しておく必要があります。
・学歴 卒業証明書や取得単位証明書などを後日提出させることは伝えておきます。卒業といっていたが実は中退であった,ということはよくあります。
・資格 資格については医療介護業界のように資格必須(またはそれに近い状態)である業界・職種では応募者側ではじめから取得できているか取得見込であることが多いのですが,そうでない業界(建設業や運輸業など)では入社後会社から支援が必要になることが多くなります。


2) 面接は原則2回

・中小企業でも可能な限り面接選考は2回。
 1回目はSPIと会社概要求人内容の説明だけでもかまいません。その場合2回目に詳細を説明と質疑を行います。2回あるというだけでいわゆる問題社員を採用してしまうリスクは大きく低下します。
・できる限り正確な労働条件を説明しておきます。
 入社手続き時に詳細を説明しようとする会社がありますが,労働条件が希望と合わずその時点で入社を辞退されると会社にとってもダメージが大きくなります。
・個別面接でもグループ面接でもok。面接官は複数がよい。
 複数の面接官(既存従業員)からの採否に関する意見を聞いておきます。
 最終的には社長なり人事総務責任者の採否決定ですが,複数の方の意見を確認しておきたいものです。
・面接で見たい項目
 通常は コミュ力>応募者の技術力
 (注)厚生労働省/ハローワーク 面接時に聞いてはいけないこと
https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/


3) 入社後の教育・訓練・研修の計画について説明

 特に未経験可,との求人を出した場合,本当に未経験の方や経験があっても実際には未経験と変わらない状態の方も多くいるようです。研修計画についてそれなりに詳細に説明しておかないと入社後研修がきついと感じられた時点でいきなり退職されてしまうことがあります。

6.採用

1) 採用内定または決定通知と入社手続き

・内定を出す前に再度求人票の内容と雇用契約内容が一致しているかを確認しておきます。
 もし相違があり入社後に従業員側から指摘があれば会社の責任となります。
・正式な内定は文書で通知します。
・入社までの詳細な段取りの説明と案内文書の配布をします。
 日程・スケジュールの確認。何月何日付で入社か。それまでに必要な研修,健康診断などがあれば詳細に説明します。研修は当然に手当が必要になります。
・仮採用期間と条件がある場合には確実に通知しておきます。
・内定取り消しの要件についても文書で通知しておきます。内定者に問題があっても取消相当でない程度の問題の場合,内定を取り消すと会社の責任となります。同時に内定取り消し要件が就業規則に記載されている内容と一致していることも確認しておきます。

2) 受諾後は,入社手続き,必要な書類の提出を求めます

 当然に必要書類が期日に提出されなかった場合や資格学歴等で面接時の説明と異なる場合には,内定保留として応募者に説明を求めます。

3) 書類等確認後内定手続もしくは雇用契約手続き完了
 入社当日朝,いきなり(無断で)出社してこない方もいます。また,初日だけ出勤して翌日から欠勤する方もいます。すぐに連絡できるように緊急連絡先(家族など)も整理しておきます。
・全く出勤のない方は何月何日付けで退職となるか,そのときの社会保険等の手続きや保険料の支払いなどはどうするかも,就業規則に決めておきます。

4) 入社後14日間が大切。

 労働基準法第21条では「試の使用期間中のもの」は入社日から14日間とされています。
 中には最初の14日だけねこをかぶって,その後わけのわからない要求を会社に対して突きつけようとする従業員もいます。会社・人事としてできることはすべて適切に行っている,と言えるようにしておきたいですね。
なのでフルタイムで雇用した従業員の場合,ほぼ毎日出勤することから,
最初の1週間で,十分な観察と当該従業員の成長のための指導・指摘をしておきます。週末には改善案を提示して,
2週目にはどの程度改善できたかを従業員に伝えて
入社日から14日以内に会社としての採否を新入従業員に適正にお伝えすること
が重要です。


7.最後に

 今後も人材の獲得競争は厳しくなっていくと考えられます。それでもよい会社・強い会社でそれを適切に地域や求職者にアピールできている会社は十分な応募者を集めることができます。逆にアピールまで適切にできない会社であれば今後事業の継続が難しくなっていくのだろうと思います。
 多くの会社・事業所様で上手な人材確保が進み,事業が成長・発展することを願います。

(注)助成金は年度ごとに要件が変更されます。利用する場合には必ず各行政機関,支援期間でご確認ください。


田村博社会保険労務士事務所著者
田村博社会保険労務士事務所
代表社員 田村 博(社会保険労務士)
豊能支部
info@simple-jinji.com

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